交見室
前立腺肥大症―治療法の選択の際に考慮すべきこと
勝岡 洋治
1,2
1大阪医科大学
2社会医療法人畷生会脳神経外科病院
pp.264-265
発行日 2012年3月20日
Published Date 2012/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102647
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昨年末に開催された某メーカー主催の「前立腺肥大症治療の新戦略」と題する講演会での質疑応答の中で,改めて前立腺肥大症の治療の選択に際し,患者不在の議論になっているのではないかとの危惧をもった。質問者の「前立腺肥大症の最善の治療はTURPであり,患者の満足度も高く,費用対効果も優れていると思う。薬物治療の優位性はあるのか?」との発言に対して,講師は「前立腺肥大症は良性疾患なので根治的療法は不要で,薬物療法の適応となり,QOLの改善が十分に期待できる」と答えている。双方の意見に合理性があり,大筋において首肯できるが,筆者には患者の視点に欠け,受診に消極的で治療を受けるのに逡巡する患者に対して,いずれの主張も説得力に乏しいと思われた。そこで,筆者訳書『前立腺肥大症―日常診察マニュアル改訂第2版(医学図書出版)』の一部を再掲し,患者の心情に寄り添った診療姿勢の大切さを喚起しておきたい。
前立腺肥大症患者の治療法の選択は,次に挙げるいくつかの要素を考慮して行われる。①症状の重症度ならびに患者の日常生活に悪影響を及ぼしている程度,②前立腺肥大症による症状が将来悪化するリスク,③治療法の有用性とならびに再治療率,④治療によって起こる合併症の可能性,⑤患者の意向,⑥治療にかかる費用,などである。
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