交見室
「性分化異常症」は差別用語か―「専門医のための性分化疾患講座」を読んで
寺島 和光
1
1聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科
pp.261
発行日 2012年3月20日
Published Date 2012/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102644
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本誌65巻第12号の特集「専門医のための性分化疾患講座」の緒方勤氏らの論文「性分化疾患の分類と社会的性の決定について」について,主に用語に関してコメントさせていただきたい。
緒方論文の表2は性分化疾患(disorders of sex development:DSD)に関する国際会議のコンセンサス(同論文の文献1)で提唱された“An example of a DSD classification”の緒方訳である。この表はすでに泌尿器科医や小児科医のいくつかの論文に引用されていることもあり,ここで問題点を申し上げたい。表中のTesticular DSDは精巣発生異常と訳されているが,正しくは精巣性性分化疾患(または~DSD)のはずである。また原文ではmixed gonadal dysgenesisと書かれているのを混合性性腺異形成,severe hypospadiasを「重症尿道下裂」としているが,前者は泌尿器科および小児科の用語集の訳とは違っており,後者は泌尿器科医は通常このようには言わない。ここで私が特に指摘したいのは,最終的な病名に卵精巣性性分化疾患など「…疾患」が使われていることである。これは極めて異例である。当たり前だが,例えば(総称として)「性器疾患」と言っても「停留精巣疾患」とはけっして言わない。このような奇妙な病名になった理由は,「DSDは必ず性分化疾患と訳する」と決めたからである。原文にDSDが使われていれば,それが総称であっても病名であっても関係がないのである。
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