書評
「ダブルバルーン小腸内視鏡アトラス」―山本博徳,砂田圭二郎,矢野智則 編
坂本 長逸
1
1日本医科大学・消化器病学
pp.225
発行日 2010年3月20日
Published Date 2010/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101915
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自治医科大学教授の山本博徳先生が『ダブルバルーン小腸内視鏡アトラス』を医学書院より出版した。今日の小腸診療の広がりを考えると待ち望まれていた1冊といえよう。ほとんどの消化器内視鏡医は,山本先生のことをよくご存じなので私が付け加える言葉はないが,それでも彼がダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)の開発者であり,世界DBEコンセンサス会議をリードしてDBEという名称を世界的に定着させた第一人者であることは,あえて述べておく必要があろう。今日DBEは欧米でもプッシュ式小腸内視鏡に取って代わり,全小腸観察と処置が可能な内視鏡として定着している。この小腸内視鏡を世界に広め,今日の小腸診療を可能ならしめたパイオニアが山本博徳教授であり,彼が満を持して出版した本が『ダブルバルーン小腸内視鏡アトラス』といえるだろう。したがって,本書は小腸診療をこれからめざす消化器内視鏡医にとってはなくてはならないものといえるだろう。
本書ではパイオニアならではの視点で,なぜプッシュ式小腸内視鏡では小腸深部挿入が困難であったかが解説され,そしてその考察の上に立ってDBEを開発した経緯が詳細に述べられている。さらにこれからDBEを始めようとする内視鏡医にとっては,豊富な図によって挿入法が解説されており,読んでいるうちに誰でもできる気持ちにさせてくれる点が実に良い。通常の内視鏡,特に大腸内視鏡の挿入手引書を読んでも山本博徳先生のDBEの挿入解説ほどには明瞭ではなく,結局大腸内視鏡は経験しないとわからない部分が大半であるが,本書に解説されたDBEに至っては,読めば誰でも頭で理解でき,明日から実践が可能と思わせてくれる。
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