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小腸内視鏡は,現在学会や研究会で研究対象として隆盛を極めている。また,日本に限らず世界でも臨床応用が急速に進んでいる。その礎をつくられた山本博徳先生の本ができた。過去を振り返ると,カプセル内視鏡(VCE)の臨床応用が始まって間もなくダブルバルーン内視鏡(DBE)が作製された。当時のわれわれの心境は,「そんなの信じられない」であった。間もなく,DBEが実際に現れ,山本先生が指導に来られた。多くの驚きと期待でDBEの使用が始まった。壮大なマジックを見るような思いであった。それまで小生の施設では,小腸疾患の多くはX線検査で診断され,プッシュ式内視鏡や術中内視鏡で確認する作業が行われてきた。それで不自由はないと思ってきた。現在も小腸疾患の初回診断はX線検査が行われ,それは有用性を失ってはいない。ただし,そのような世界は九州のわれわれの関連施設に限られるようである。
DBEの挿入技術は著しく進歩している。それに伴いDBEの診断能も日進月歩である。本書では,まず手技に関する総論に相当のページが割かれている。その内容は,DBEの仕組み(なぜ小腸全域を観察できるのか),DBE検査を行うに当たって(知っておくべき基本事項),挿入手技(効率のよい挿入に,基本原理はここでも活きる),偶発症と防止策(特有の偶発症を理解することで,事前に防止できる),治療手技(内視鏡治療の実際)である。DBEが普及し多くの診療に使用されているが,基本に立ち戻って確実で安全な操作をしてほしいとの希望が込められている。DBEの安全性に関する治験が行われ,保険申請前でもあり,重要な願いであろう。海外にも極めて多くのDBE使用者がおり,すでにアトラスが出版されている。本書は,それに負けない内容になっていると思われる。
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