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大学の普通の医局に在籍している者にとって,今も昔も論文書きは重要であることにかわりない。しかし,これからは特許の数も評価される時代がくるのではないかと思い,練習を兼ねて特許を申請してみた。何もわからず,周囲に聞く人もなく,試行錯誤した経験をお話しする。
当時,術場は雲の彼方ではあったが,手術にからみたかったので手術に関するもので出してみた。TVT導入時,生食を入れるルートと穿刺針を通すルートを完全に一致させるのが難しかった。そこで穿刺針に内腔をあけ,水圧をかけながら穿刺できるといいな,という思いつきを申請することにした。まずは医学の論文検索をしてみるがみつからない。次に特許庁の日本の特許文献を検索してみる。世界の検索は難しいが大事な特許は日本でも申請しているはずなので,初心者には十分である。PubMedのように特許庁のページからキーワードでネット検索できる。だが文面が解読しづらい。何を隠そう自分の書いた特許でも読みにくい。これは特許特有の書き方に原因があるのだが,外国人の特許は専門を理解していない人が翻訳しているからよけいわからない。わからないなりに調べると,TVTの針を作っているJ & Jによる内視鏡やガイドを使ったTVTの特許があった。当然これらの針には内腔があり,これだけでは新たな特許にならないので付随事項をつけて申請した。臨床的には付随事項は不要で内腔付き穿刺針さえあればよかったのだが,練習を兼ねて申請した。特許を申請したら,今度は協力してくれる会社探しである。特許のあるJ & Jなら試作品を作ってくれるのではないかと思って同社に相談した。このときがいわゆる“営業”の初体験だったので交渉がうまくいくわけもなく,ここには書けないさまざまな理由から,よいお返事は得られなかった。その後も大した進展もなく,特許審査をせず,数年後に特許権を放棄した。これ自体は結局役に立っていないが,特許のイメージが湧き,その後の特許申請はしやすくなった。例えば,TOT関連特許などは論文を見ただけで現物を見ずして特許をとっている。研究費や研究時間がなく研究ができないという人も,アイディアさえあれば簡単に特許申請ができることは知っておいたほうがよいと思う。
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