書評
「イラストレイテッド ミニマム創 内視鏡下泌尿器手術」―木原和徳 著
荒井 陽一
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1東北大学大学院医学系研究科・泌尿器科学分野
pp.487
発行日 2008年6月20日
Published Date 2008/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101515
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1990年代,腹腔鏡手術が本格的に導入され,現在は体表手術を除くほとんどすべてが腹腔鏡下に施行可能な時代になった。腹腔鏡手術がなぜこれほどまでに普及,発展したのか? それは開放手術の欠点である侵襲性の問題に劇的な革命をもたらしたからである。そして,創の大きさは侵襲そのものなのだということが誰の目にも明らかとなった。一方,東京医科歯科大学の木原和徳教授は従来の開放手術を基本として,侵襲そのものである創を最小化させる新しい方向性を呈示してきた。今回刊行された本書はその長年の成果の集大成とも呼ぶべきものである。
2002年に著者は『ミニマム創内視鏡下泌尿器手術』を刊行し,本術式の基本概念とその応用手技を明らかにされている。本術式の最大の特徴は開放手術にこの内視鏡を取り入れたことにある。予想される窮屈な操作野の欠点が,内視鏡と独自に考案した器具によってみごとに補われている。モニターによる術野の共有は,手術の客観性と再現性を実現し,結果として著しい教育的効果をももたらした。本書『イラストレイテッド ミニマム創内視鏡下泌尿器手術』では,その後の膨大な症例蓄積をもとにさらに大きな飛躍を遂げている。泌尿器科の全手術を著者のコンセプトのもとで,1つの手術体系として完成の域にまで達せしめたものといえよう。
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