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患 者 47歳,女性。
主 訴 低血圧発作。
家族歴・既往歴 特記すべきことなし。
現病歴 生下時よりてんかん発作,精神発達遅延,顔面血管線維腫,頭蓋内石灰化を認め,結節性硬化症と診断されていた。2003年6月中旬に意識消失,低血圧,チアノーゼ,発熱が出現したため,7月中旬に当科を受診し,CT,MRIにて腎血管筋脂肪腫の自然破裂と診断され,加療目的にて入院となった。
入院時現症 血圧73/55mmHgと低血圧を認めた。眼瞼結膜は貧血様,精神発達遅延を認め,意思疎通はとれず,寝たきりの状態であった。鼻唇溝から両頬にかけて血管線維腫,手足の爪には肉芽腫様の変化がみられ,爪下線維腫を認めた。右腹部には弾性硬,表面平滑,小児頭大の腫瘤を触知した。
入院時検査成績 Hb 8.1g/dl,Ht 24.2%と貧血を認め,BUNは93mg/dl,LDH 658IU/l,CRP 5.5mg/dlと上昇を認めた。尿検査異常は認めず,呼吸機能はPO2 67.3mmHg,PCO2 32.5mmHgと低下していた。
画像診断 腹部CTでは両腎ともわずかに正常腎実質を残しているが,大部分は脂肪成分を有する腫瘍によって置換されており,腎血管筋脂肪腫の所見であった。右腎上極には被膜に包まれた部分があり,内部はlowからややhigh density areaが混在しており,新旧混在した被膜下血腫と考えられ,右腎血管筋脂肪腫の自然破裂と診断した(図1,2)。
経過 腫瘍に一致して微細な腫瘍血管の増生を認めた。右腎腫瘍内に2cm大の動脈瘤を3個認め,上極に血腫と思われる無血管領域がみられたことより,上極枝末しょうの動脈瘤が破裂したと考えられた。
以上より右腎腫瘍内の腎動脈瘤破裂の診断の下,金属コイルを使用して腎動脈瘤塞栓術を施行した。未破裂の動脈瘤以外も大きさが5mm以上あり自然破裂の危険性が高いために同時に塞栓を行った(図3)。塞栓後,動脈瘤は描出されなくなったが,梗塞範囲は腫瘍を含め広範囲となった(図4)。
塞栓後2日目より39℃ 以上の発熱とCRP,および白血球の上昇を認めた。抗生剤の投与にもかかわらず5日目も解熱傾向がなく,CRPが上昇傾向を示したため,CTを施行したところ腫瘍内にガス像を認めた。発熱および炎症反応の上昇を認めたため,気腫性腎盂腎炎も疑われたが(図5),尿検査で膿尿はなく,DICの所見を認めなかったことより塞栓術に伴う腎内ガス像と判断し,厳重な経過観察の下,保存的治療のみを行った。
術後6日目より白血球,CRP,LDHの低下とともに解熱傾向となり,その後の経過は良好で退院となった。退院後も全身状態良好で,退院後のCTではガス像も消失した(図6)。
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