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患者 82歳,男性。
主訴 食欲不振。
家族歴 特記すべきことなし。
既往歴 1993年大腸癌で手術。
現病歴 2001年8月中旬より食欲不振,全身倦怠感を自覚,2か月で8kgの体重減少を認めたため,近医を受診した。CTにて両側副腎に腫瘤を認めたため,2001年10月25日当科に入院した。
入院時現症 血圧84/58mmHg,脈拍110/分,体温36.7℃。腹部に手術痕を認めたが,平坦で圧痛などは認めなかった。表在性リンパ節は触知しなかった。
検査所見 末梢血生化学検査;ヘモグロビン11.6g/dl,血小板12.3×104/mm3と軽度低下を認めた。血液生化学検査では異常は認めなかった。内分泌学的検査;ACTH 320pg/ml(正常7~56)と高値を認め,コルチゾール1.2μg/dl(正常4.5~21.1)と低値を認めた。他のホルモンも低値もしくは正常下限であった。Rapid ACTHテストでは,反応は認なかった。
画像所見 腹部CTでは両側副腎に径5cmの内部が比較的均一で辺縁平滑,造影剤で軽度造影効果を示す充実性腫瘤を認めた(図1)。腹部MRI検査では,T2強調画像で大部分が低信号を示し,周囲組織と接しているはものの明らかな浸潤は認められなかった(図2)。
入院後経過 内分泌学的検査所見からアジソン病を呈していると考えられたが,原疾患が特定できなかったため,確定診断目的にCTガイド下左副腎生検を施行した。病理組織学的に,非ホジキンリンパ腫,びまん性大細胞型,B細胞型と診断された(図3)。肝逸脱酵素の急激な上昇を認めたため,腹部超音波検査を施行したが,肝の著明な圧排,ならびに肝への直接浸潤が疑われた(図4)。腹部CTでは右副腎に一致して低密度の辺縁不整な腫瘍が下大静脈を内側に圧排しており,また肝との境界が不明瞭で腫瘍の直接浸潤が疑われた(図5)。直ちにビンクリスチンによる化学療法を施行したが,肝への直接浸潤が急速に進行し,肝不全のため2001年12月6日永眠された。
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