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1 診療の概要
1.TABの理論
ヒトのアンドロゲンの95%は精巣由来のテストステロンであり,残りの5%は副腎由来のdehydroepiandrosterone(DHEA)やandrostenedioneである。以前は,副腎由来のアンドロゲンは前立腺癌の増殖に対して軽度とされ,精巣由来のアンドロゲンを抑制すれば十分であると考えられてきた。しかし,1985年,Labrieら1)は,副腎性アンドロゲンが前立腺細胞内でテストステロンやジヒドロテストステロン(DHT)に変換され,実に前立腺組織中アンドロゲンの約40%が副腎由来であることを示した。以上の知見より,彼らは前立腺癌治療において精巣由来アンドロゲンだけの抑制では不十分であり,副腎性アンドロゲンをも抑制する必要があるとし,TAB(total androgen blockade)を提唱した。それ以来,本当に臨床的に有用であるかについて多くの研究(比較試験)が行われてきた。
2.TABの治療成績
TABが単独療法より優れているかについては,現在でも議論のあるところである。2000年,PCTCG(Prostate Cancer Trialists'Collaborative Group)は27のランダム化試験を集積し,転移性または局所進行性前立腺癌8,275例に対してメタアナリシスを行った2)。その結果,全体としてはTAB群と単独療法群の5年生存率はそれぞれ25.4%,23.6%であり,TAB群が1.8%優っていたが,その差は統計学的に有意差を認めなかった。ただし,抗アンドロゲン剤別の解析では,非ステロイド性抗アンドロゲン剤(ニルタミド,フルタミド)の併用で単独療法群と比較して生存率は2.9%とわずかであるが有意に上昇した(27.6% vs 24.7%)。一方,ステロイド性性抗アンドロゲン剤(酢酸シプロテロン)の併用では,むしろ単独療法より生存率が低下したという結果であった(15.4% vs 18.1%)。このメタアナリシスには,もう1つの代表的な非ステロイド性抗アンドロゲン剤であるビカルタミドの成績が含まれていない。
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