特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
5.腫瘍(外来化学療法)
【前立腺癌】
63.80歳代のPSA値がグレイゾーンの患者です。対処について教えて下さい。
高橋 敦
1
1札幌医科大学泌尿器科
pp.225-228
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100271
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1 診療の概要
2002年度の日本人男性の平均寿命は78.32歳と世界でも有数の長寿国となっている(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/)。さらに,近年の出生率の低下に伴い,高齢者人口がますます増加していくことが予想される。前立腺癌は高齢者にみられる癌であり,年齢とともに罹患率が増加するとされ,今後,飛躍的に患者数が増えるものと推測されている。このような状況のなかで,設問にある「80歳代のPSA高値の患者」に遭遇する機会はますます増えてくることは十分予想される。したがって,これらの患者の対処法については,今後,泌尿器科医にとって重要な課題となることは想像に難くない。
1.80歳代の前立腺癌の特徴
まず,80歳代の前立腺癌の特徴について考察する。臨床的に前立腺癌の徴候がなく,剖検によって初めて認められるラテント癌は,年齢とともに増加するといわれている。これまでの白石ら1)の検討では,臨床癌の罹患数に関しては日本人に比べて欧米人のほうがはるかに多いのにもかかわらず,ラテント癌では日本人と欧米人であまり差がないことがわかっている。彼らは,70歳以上の日本人高齢者の20~30%にラテント癌を認めると報告している。したがって,高齢者に対する積極的な生検により臨床的に意味のない癌が見つかってしまう頻度が高くなることが危惧される。一般的には高齢者の癌は進行が遅く,若年者の癌より予後が良好と思われがちであるが,前立腺癌においてはどうであろうか。
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