特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
5.腫瘍(外来化学療法)
【前立腺癌】
62.内分泌療法中に前立腺癌が再燃した患者です。外来通院で行える治療法について教えて下さい。
高橋 敦
1
1札幌医科大学泌尿器科
pp.222-224
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100270
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1 診療の概要
前立腺癌の増殖は男性ホルモン依存性であるため,治療としては男性ホルモンを遮断する内分泌療法がきわめて有効であることは周知の事実である。しかし,この効果も平均2~3年で無効となる。いわゆるホルモン非依存性癌となり再燃する。ひとたび再燃を起こすと平均1年で不幸な転帰をとり,その予後はきわめて不良である。したがって,転移性前立腺癌の成績を向上させるためには,この再燃癌をいかに治療していくかが重要であるかは言を待たない。
再燃癌獲得の機序としては,これまで多くの研究がなされてきた。大きく2つの機構に分けられ,1つはアンドロゲン受容体の異常であり,もう1つはアンドロゲン受容体とは別の機構によるものである1)。前者には,(1)アンドロゲン受容体(AR)の増幅(これにより少量のアンドロゲンが反応する),(2)アンドロゲン受容体遺伝子の変異(アンドロゲン以外の抗アンドロゲン剤,エストロゲン,ステロイドも結合し反応する),(3)アンドロゲン受容体の転写活性を増強する因子である共役因子co-activatorの異常,(4)成長因子(insulin-like growth factor-1)やサイトカイン(IL-6など)の産生異常による(多くはco-activatorの異常を伴う)アンドロゲン受容体の活性化,が考えられている。一方,アンドロゲン受容体が関与しない機構としては,(1)アポトーシス関連遺伝子群(Bcl-2など)の異常によるアポトーシスの回避,(2)神経内分泌分化細胞の出現・増殖,が挙げられる。ただし,これらの異常が単一に起きているというより,複合的に関与していると考えられている。
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