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1 診療の概説
維持化学療法とは,本来,手術や放射線で治療が完遂したあとの微小残存病変に対し,低濃度で持続的に抗癌剤を投与することによって再発を防ぐものである.癌は,手術で摘出したり,放射線を照射することなどによって肉眼的に病巣が消失してもしばしば再発する.これは顕微鏡レベルで癌細胞が残存しているためと考えられる.顕微鏡的に残存した細胞は増殖能が低く,多くは休止期細胞にあるといわれている.このような細胞に対しては,寛解導入方法で使用するような高濃度の抗癌剤を投与しても,抗癌剤は癌細胞に取り込まれず抗腫瘍効果は低いため,抗癌剤の血中濃度を少量であるが一定レベル以上に維持させる維持化学療法が試みられている.
これに関し,近年,JGOGにより頸癌根治手術後,あるいは放射線療法後の症例で,5―FU維持量(200 mg~300 mg)を1年間投与した群を非投与群と比較をしたところ,特に根治手術+放射線治療後の群で投与群が非投与群と比較して5年生存率が有意に(10%)延長したという報告がなされた1).
その一方,進行頸癌や再発癌で強力な化学療法の適応とならない場合,維持化学療法の1つとして休眠療法(dormancy therapy)が注目され,特にトポイソメラーゼII阻害剤であるエトポシド経口剤投与の有用性が検討されている.エトポシドは,従来,悪性リンパ腫や肺小細胞癌に有効であると報告されてきた.しかし子宮頸癌分科会において,子宮頸癌再発例および子宮頸癌III期,IV期の未治療例で,エトポシド1日1回50 mgを21日連続経口投与したのち1~2週間休薬し,これを1コース以上反復するというプロトコールを施行したところ,70例中,CR1例,PR18例を認め,計27%で有効であったと報告している2).
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