交見室
膀胱扁平上皮癌に対するM-VAC療法,他
塚本 泰司
1
1札幌医大
pp.981-983
発行日 1993年11月20日
Published Date 1993/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901078
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
7月号の鈴木正泰先生(臨泌47:579〜582, 1993)の「化学療法が有効であった膀胱扁平上皮癌の2例」は興味深い症例報告でした。著者らも指摘しているように,これまでの報告ではM-VAC療法の扁平上皮癌のコンポーネントを含む膀胱癌に対する臨床効果は必ずしも良好なものではなく,私もむしろ否定的な意見が多いという印象を持っていました。実際,われわれの少数例の検討でも,移行上皮癌に扁平上皮癌を合併している症例あるいは移行上皮癌のみでも血中SCC抗原が上昇している症例ではM-VACの効果があまり良くないという結果を得ていました1)。そのため,膀胱扁平上皮癌に対しては期待を持っていなかった訳ですが,今回の2症例での結果により改めてM-VAC療法の意義を再認識させられました。この意味から本論文は私自身にとって貴重な症例報告でした。
なぜこのような効果が得られたのかを問うことは愚問かもしれませんが,あえてするとすれば,2症例とも高分化型であったこと,可及的に原発巣のtumor reductionを行っていること,などが解答のヒントになるかも知れません。すなわち,これまでの報告の多くは,移行上皮癌に扁平上皮癌のコンポーネントを合併していた膀胱癌に対しM-VAC療法を行った場合に扁平上皮癌のコンポーネントが残存しやすいという結果から,この化学療法が扁平上皮癌にあまり有効ではないとされているようです。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.