特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
2.神経因性膀胱障害と尿失禁
■尿失禁
【遺尿症(夜尿症)】
44.抗コリン薬による口腔内びらんをきたした夜尿症患児です。対処と処方について教えて下さい。
大島 一寛
1
1福岡大学医学部泌尿器科
pp.158-159
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100252
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1 抗コリン薬の薬理作用と頻度
夜尿症をはじめ泌尿器科領域で頻用されるoxybutinin(ポラキス(R))やpropiverine(バップフォー(R))に代表される抗コリン薬は,設問 43 でも述べたようにムスカリン受容体拮抗作用を持ち,副交感神経節後部でacetylcholinの作用を阻害する競合的遮断薬である。これらの薬剤で口渇を生じるのは,M3 receptorを介する唾液線分泌抑制によるもので,口腔内乾燥のために,ときに嚥下や話談が困難になるほど高度なこともあるとされている。また,胃では胃液,H+イオンの分泌低下,消化管では運動機能低下をきたし,これらの作用が便秘をはじめ種々の消化器症状をきたす原因になっている。膀胱では利尿筋収縮もM3 receptorが関与してこれを抑制し,またM2 receptorを介して充満時の切迫性失禁を軽減する1)。
すなわち,夜尿症ではこの薬理作用を期待して無抑制収縮を抑え,機能的膀胱容量の増大を期待しているわけで,膀胱以外の作用発現は使用目的に反する副作用ということになる。両薬剤の副作用報告書(医薬品インタビューフォーム)2)によると,口腔内病変の頻度は0.2~0.3%でほぼ同率である。具体的には,口角炎,口唇のあれ,口内炎,口腔内粘膜付着,口内疼痛,口内のあれ,舌炎,舌あれ,舌苔などが報告されており,口渇(口渇感)は9%にみられ,抗コリン薬の代表的副作用である。
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