特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
2.神経因性膀胱障害と尿失禁
■尿失禁
【機能性尿失禁】
42.麻痺による機能性尿失禁の患者です。対処と処方について教えて下さい。
朴 英哲
1
1ぼく泌尿器科クリニック
pp.150-153
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100250
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1 診療の概要
機能性尿失禁は,身体運動障害(ADLの低下)や痴呆(失認や失行)による尿失禁であり,膀胱や尿道といった下部尿路機能の異常が原因ではないとされている。例えばADLの低下した患者では,正常な尿意を感じても身体運動障害のためトイレまでたどり着くことができない,たどり着いても排尿姿勢がとれない,衣服を脱げないといったことが原因で尿を漏らしてしまう場合がある。また痴呆患者では,トイレという場所の認識がない,あるいはトイレを間違える,正常な排尿への無関心,などといったことが原因でオムツが取れないことがある。
以上のように機能性尿失禁を額面通りに捉えるならば,その治療の主役は介護やリハビリテーションを担当する家人やケアマネージャー,看護師,ヘルパー,理学療法士達であり,尿失禁治療に泌尿器科医の介入は不必要かもしれない。しかしながら,実際にはこの範疇に入る患者の多くが高齢者であることから,脳血管障害の後遺症や前立腺肥大症に伴う過活動膀胱を合併していることが少なくない。同様の理由で多量の残尿を伴う溢流性尿失禁を合併している場合もある。単にADLが不良だから,痴呆が高度だからという理由だけで機能性尿失禁と片付けてしまい,医学的介入を排除してしまうと,本来ならば薬物治療や外科的治療,そして場合によっては間欠的導尿法によって改善あるいは治癒が見込めた患者を無治療のまま放置することにもなりかねないので注意を要する。
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