今月の臨床 ここが聞きたい 産婦人科外来における対処と処方
II. 内分泌
[機能性子宮出血]
27.思春期の機能性子宮出血の対処と処方について教えて下さい.
澤田 類
1
,
村上 節
1
1東北大学医学部産婦人科
pp.433-435
発行日 2003年4月10日
Published Date 2003/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100968
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1 診療の概説
内分泌環境の不安定な思春期には,無排卵性の機能性子宮出血が起こりやすい.Sutherlandらは,20歳未満の不正性器出血200例中182例(91.0%)が機能性出血であったと報告しており,思春期にみられる性器出血の大部分は機能性子宮出血であるといえる.その原因は思春期の内分泌環境の不安定さにあると考えられ,視床下部―下垂体―卵巣系のホルモン調節機構の未熟性のために引き起こされる無排卵性周期に由来するものが多い.つまり,排卵が起こらず黄体形成に引き続くプロゲステロンの分泌が障害されるために子宮内膜が分泌期へと変化することができず,エストロゲンの持続分泌により増殖,肥厚した子宮内膜の先端部が螺旋動脈からの血液供給不足より自らを維持できなくなり,壊死を起こし破綻出血を生じる.また,頻度は低いが,排卵周期に伴う機能性子宮出血も存在する.これは,エストロゲンとプロゲステロンの子宮内膜に対する相対的なアンバランスから生じるものである.これらはいずれも性腺の発達過程で一時的に出現するものであり,成長とともに自然に回復していくことが期待される.
しかし,出血量が多かったり持続期間が長かったり,頻回に出血を繰り返すような症例に対しては,ホルモン動態を考慮したうえで止血し,再発を予防するような治療が必要となる.
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