特集 ここが聞きたい―泌尿器科外来における対処と処方
2.神経因性膀胱障害と尿失禁
■神経因性膀胱障害
【蓄尿障害】
33.自己導尿を行っている外傷性脊髄損傷(第8胸椎)の患者です。対処と処方について教えて下さい。
中川 晴夫
1
1東北大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野
pp.122-124
発行日 2005年4月5日
Published Date 2005/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100241
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1 診療の概要
脊髄損傷は人口100万人あたり40人程度発生しているとされ,本邦では1年あたりおよそ5,000人脊髄損傷患者が発生するといわれている1)。外傷性脊髄損傷による排尿障害(神経因性膀胱)は,その障害部位(脊髄レベルにおける高さ)と損傷の程度(完全損傷か不完全損傷か)によりその膀胱機能障害は異なってくる。脊髄排尿中枢より上位の核上型脊髄損傷と,それよりも下位の核・核下型脊髄損傷とに大きく区別される。また,受傷からの時期により,排尿障害は変化することが知られているが,ここでは急性期・回復期の排尿障害については割愛して慢性期の排尿障害・排尿管理について述べることとする。
核上型障害による排尿障害は,蓄尿期には排尿筋過活動を呈することが多い。排尿筋過活動は蓄尿時の排尿筋の不随意収縮であり,頻尿・尿失禁の原因となるだけではなく,蓄尿期の高圧状態(高圧蓄尿)の原因でもある。さらに,排出時には排尿筋括約筋協調不全(排尿時の尿道括約筋の弛緩不全)を呈することが多く,排尿効率の悪化(残尿の増加)による頻尿や尿路感染症の原因となるだけではなく,高圧排尿の原因となる。これら,蓄尿・排出時の高圧状態は膀胱の変形,膀胱尿管逆流,水腎症の原因ともなり,上部尿路に対する対策も必要となる。
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