連載
海外生活16年—出会った人・学んだこと・4
神保 孝一
1
1札幌医科大学皮膚科
pp.368
発行日 2001年4月1日
Published Date 2001/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412903532
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メラノサイトのprogrammed cell deathと尋常性白斑
私がハーバード大学医学部皮膚科でFitzpatrick教授から最初に研究を行うように言われたテーマは尋常性白斑(vitiligo)の病気モデルを探すこと,また,それに基づき脱色素斑の発症機序についての研究を行うことであった.私自身はボストンでの研究が,日本での研究の延長を行うことを当初期待していたが,この中で毛髪におけるメラノサイトの幹細胞とその細胞の分化増殖機転,また,メラニン蛋白の生化学的性状とメラノソームの構造との関連等であった.しかし,これらの課題はさておいて,まず,尋常性白斑の病態モデルを探すことであった.
ちょうど,ネブラスカ大学に行ったBrumbaugh教授が鶏の色素細胞の研究をしており,白色レグホンのembryoはメラノサイトを持っているがadultではメラノサイトを欠いているということを報告していたことをBrown大学のQuevedo教授が話していることを聞き,この白色レグホンのembryoを用いた研究から何らかの尋常性白斑の病態に関する所見を得られないかという仮定のもとに,この研究が始まった.確かに白色レグホンembryoにはメラノサイトが存在し,メラニン顆粒を当初造っているが,その後何らかの機序で細胞死が起こり,結果としてadultではメラノサイトを欠くことが分かった.電子顕微鏡を用いた研究によりメラノサイトが自己で産生したメラノソームを周囲角化細胞に受け渡すことができずに結果としてメラノソームの自家喰空胞を作り細胞死に至ることを見つけた.
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