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1999年5月5日から9日までの5日間,米国イリノイ州シカゴにて,第60回米国研究皮膚科学会(The Society for Investigative Dermatology, 60th Annual Meet—ing;SID)が開催された.本学会は,研究皮膚科学の分野では最高峰の学会の一つであり,欧州研究皮膚科学会(ESDR),日本研究皮膚科学会(JSID)とともに,三大研究皮膚科学会の一角をなしている.昨年(1998年)は,上記の3学会が,合同でドイツのケルンにて,国際研究皮膚科学会(Inter—national Investigative Dermatol—ogy;IID)を開催したため, SIDを含めてそれぞれの学会は,IIDが年次総会を兼ねるものとし,独自の年次総会を行わなかった.したがって,今回のSIDは,米国内で行われるSIDの年次総会としては2年ぶりのものとなった.SIDの開催地は,1990年代前半は,ワシントンD.C.が多かったが,最近は,米国のほぼ中央に位置するという地の利のためか,シカゴで開かれることが多く,本年もこの例にもれず,シカゴにて開催された.学会会場は,シカゴのダウンタウンの中央を横切り,ミシガン湖に注ぐシカゴ川の畔に位置する大型のホテル,Sheraton Chicago Hotel&Towersであった.年々,規模が大きくなるSIDであるが,このホテルは発表会場の広さ,客室数ともにまだまだ余裕が感じられた.5月初旬のシカゴは,日中の温度十数度Cで,概して過ごしやすかったが,学会期間中は,天気が変わりやすく,時折,通り雨にみまわれ,また,“windy city”とあだ名されるように風が強く,日陰では,少し肌寒く感じることもあった.
本年のSIDも,例年同様,北米全土はもとより,ヨーロッパ諸国や日本,韓国などアジアの国々からも,基礎研究者,皮膚科臨床医を含めて,皮膚科学および皮膚生物学の分野の多数の研究者が集まり,総演題数は,839題に及んだ.毎年恒例の名誉ある招待講演には,William Montagna Lec—tureに,ロンドンからFiona M.Watt先生, Herrnan Beerman Lectureに,免疫学者のPhilippa Marrack先生, Naomi M.Kanof Lectureに, Brian L.Strom先生が選ばれ, Marrack先生は,T cellの機能について,基本から最先端までを分かりやすく話され,また,ペンシルバニア大学のStrom先生は,今までSIDでも比較的注目されることの少なかったDermatopharmaco—epidemiologyについて,その重要性を力説された.近年,皮膚の幹細胞は遺伝子治療,腫瘍発生のメカニズム等と関連して大きな注目を集めているが,William Montagna LectureのWatt先生は,幹細胞が今日のように注目される以前から,表皮の幹細胞の局在部位とその性質の解明,さらに,幹細胞集団の分離に取り組んでおられ,表皮の幹細胞の研究において,常に最先端を走っている研究者である.彼女の今回の講演は,これまでの研究成果を解りやすくまとめたものであり,con—focal microscopeのイメージを3次元的に再構築したものを,コンピュータのビデオプレイヤーを用いて回転させてみせるなど,いろいろと工夫されており,特に印象に残るものであった.Concur—rent Minisymposiumとしては,“Use of dendritic cells as im—munotherapeutic agents”,“Hair follicle morphogenesis/carcinogenesis”,“Apoptosis”,“Adhesion:components and mechanisms”,“Growth fac—tors/signal transduction”等が組まれたが,それぞれのテーマは,現在の皮膚科領域の研究のトレンドと捕らえ,また,将来の方向性を探るものであろう.一般演題は,Minisymposiumを含めて口演255題,ポスター584題であり,この内,最もインパクトのある演題としてGeneral Plenary Sessionに選ばれたものは,32題であった.その中には,signal transduction, dendritic cell,photodermatology, stem cell等基礎的な演題や,アトピー性皮膚炎の臨床研究など,多彩な内容の演題が含まれていたが,日本からも,大阪大学皮膚科の佐野先生,板見先生らのconditional gene targetingを用いた細胞内signa—ling molecule, Stat 3の機能の解析についての発表が,このGeneral Plenary Sessionに選ばれ,高い評価を受けていた.
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