Derm.'99
脇役から主役へ/皮膚科医の独り言
河合 修三
1
,
玉井 克人
2
1関西医科大学反膚科
2弘前大学皮膚科
pp.154
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412902880
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一昔前,患者側も不治の傷と認識し,医師も逃げ腰で,看護の恥と言われた褥瘡が,にわかに脚光を浴び始めた.まず,責任を押しつけられやすかった看護側より積極的な取り組みが始まった.褥瘡を作らないために,ブレーデンスケールを使い危険度の高い患者を予測する方法や,円座より優れた徐圧,減圧の方法が普及し始めた.さらに創のケアにおいても,相手にしてくれない医師に頼らず,これまでとは全く正反対ともいえる方法が導入され始めた.消毒を行い,乾かせることが基本であった従来の創傷治療法とは異なり,消毒を行わずに,生理食塩水で洗浄し,創を湿潤させることを基本とする米国流の創傷治療法である.この創傷治療は,確かに極めて理にかなった画期的な方法であった.しかし,この方法は万能ではなく,感染をきたし悪化する場合が少なからず発生した.この原因は,生きた細胞(細菌)を殺す従来の創傷治療の利点を無視し,再生治癒能力が十分でない状況で生きた細胞(生体)を育てようとした結果と考えられる.今日,本邦では,細菌の増生力と生体の再生治癒能力を天秤にかけ両治療法を選択し,その状況にあった外用剤,被覆材を使用するようになりつつあるのが現状である.
昨年,日本褥瘡学会が創立され,本年9月には第1回の総会が開催されることになった.この会は,各科の医師,看護婦(士),薬剤師,介護士,薬剤開発技術者などが参加するものである.すべての医療従事者から嫌われ者であった褥瘡は,今や垣根を越え一致団結して治療に取り組まれる主役の立場になりつつある.
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