連載 皮膚病の現状と未来・5
PCR法とSouthern法(2)
川島 真
1
1東京女子医科大学皮膚科
pp.821
発行日 1992年9月1日
Published Date 1992/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412900717
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パリのパスツール研究所に留学していた当時は,Southern法全盛のころであり,未知のパピローマウイルスDNAを求めて日夜オートラのフィルムの現像に明け暮れていた.ある朝,皮膚癌の数十検体のうちのボーエン病1検体にウイルスDNAと思われるバンドが現れてきた.それが後に,皮膚癌から初めて検出された新しいタイプとして認識されたHPV34型であった.その日の感動は今でも鮮明である.私にあの感動を与えてくれたSouthern法にどれだけ感謝したことであろう.しかし,その後数百検体をSouthern法で解析したが陽性に出たのは数検体にすぎず,Southern法の検出感度に疑問を持つこともあった.Southern法に裏切られたのであろうか.
その不遜な疑問に答えを与えてくれたのがPCR法である.PCR法は原理的には,Southern法の数百万倍の感度を有する.そこで,先に陰性に終わった検体をPCR法で再度解析したところ,1例も陽性となった検体はなかった.私はこの膨大なnegative dataに落胆するどころか,逆にSouthern法の偉大さにあらためて感激した.
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