Derm.2022
皮膚科診療で感じる国際化
木下 美咲
1
1杏林大学医学部皮膚科学教室
pp.31
発行日 2022年4月10日
Published Date 2022/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206641
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トロントでの臨床留学を終えて大学に帰室し間もなく3年となる.新型コロナの蔓延にもかかわらず外国人患者さんを診療する機会が多くなった.多人種・多文化都市での診療経験から学んだのは,①国際的,あるいは特定の人種では一般的だが本邦では患者数が少ないためよく知られていない疾患,②本邦でも患者は存在するが,疾患概念自体が浸透していない(あるいは分類や捉え方が異なる)病態が少なからず存在するということだ.帰国後のある日,アフリカ出身の30代黒人女性が両頰に多発する粟粒大の黒褐色丘疹を主訴に受診した.何件かの近隣皮膚科に相談したが明確な診断名がわからないという.留学時にフレッシュマン用のレクチャーに忍び込んで聞いたことの受け売りで「(黒人俳優の)モーガン・フリーマンさんのお顔にあるのと同じ,dermatosis papulosa nigraですよ」と説明すると納得,安心されていた.またあるときには両前腕の異常なかゆみに悩まされ続けている50代白人男性が受診した.数々のステロイド軟膏や抗ヒスタミン薬を処方されるも全く効かず,睡眠にも支障をきたし疲弊しているという.軽度の乾燥と搔破痕以外に明らかな皮疹はない.このbrachioradial pruritusはnotalgia parestheticaと同様,神経因性皮膚症に位置づけられる.本邦では比較的珍しく,独立した疾患概念として認知されているとは言い難いが,欧米の教書では一般的に記載されている.神経障害性疼痛薬によく反応するためプレガバリンの少量内服を開始したところ,数年悩んだ症状がほぼ完全に消退し夢のようだと喜んでおられた.
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