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私はアトピー性皮膚炎専門外来をしている.既に診断がついてから予約を取っていらっしゃる方も多いので,診断に苦労はなく単調と思われがちだ.実際のこところ,以前はアトピー性皮膚炎に立ち向かう武器は,ステロイド外用,タクロリムス軟膏,保湿などの外用剤,抗アレルギー剤や漢方などの内服薬,そしてトーク力しかなかった.しかし,2018年春,デュピルマブの登場により外来は一変した.なんといっても高額治療ではあるが,アトピー性皮膚炎がこれほどまでに寛解することがあるとは思ってなかった.JAK阻害薬の軟膏と内服薬の登場で,治療手段が増え私の武器は増すばかりだ.しかし,デュピルマブの治療をしてほぼEASI(eczema area and severity index)やNRS(numerical rating scale)がクリアになっても,湿疹病変の再燃を繰り返す患者さんがいらした.その患者さんは「お酒を飲むと悪くなる」とお話しされていたが,金属パッチテストをしたところニッケルとクロムに陽性所見が得られ,おつまみに食べるチョコレートやナッツなどの金属含有の多い食物除去で湿疹の消長が小さくなったことを経験した.湿疹が全身にあったころは何が悪化因子かわからず,パッチテストもできるような状態ではなかったが,湿疹が良くなったことで,悪化因子が見えることが増えた.湿疹が良くなったからこそ,外用剤を使うタイミングが明確になり生活指導がより生かされるようになったことに私は感激した.季節,花粉で湿疹が悪化する人,発汗で湿疹が良くなる人も見えてきた.湿疹の悪化因子が見えるようになり,ごく一部の患者さんではあるが,デュピルマブを卒業し再び外用加療を中心に治療する患者さんも経験した.
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