とびら
国際協力で絆を感じて
渡邊 雅行
1
1独立行政法人国際協力機構青年海外協力隊事務局
pp.441
発行日 2016年5月15日
Published Date 2016/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200547
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2015年は5月のゴールデンウィークと9月のシルバーウィークの2回,ネパールを訪問しました.1986年に青年海外協力隊隊員としてネパールに赴任して以来,ネパール訪問は20回以上に及びます.しかし,この2回の訪問は,それまでの訪問とは違った意味がありました.というのも2015年4月25日にこのヒマラヤの国はM7.8の大地震に襲われたからです.私にとって,ネパールは最初の海外渡航先でしたが,文字通り第2の祖国となっています.当初この開発途上国のために何か役に立つことができたらという思いで青年海外協力隊に参加しましたが,逆に,任期中ネパールの人々に支えられ,毎回多くのことを教えられています.
さて,5月に首都カトマンズに向かった飛行機の中では,日本人と思われる人はおよそ半数でしたが,そのほとんどが制服を着た自衛官でした.私は発災後1週間という早い時期に入国したので,まず,情報収集のためにコミュニティ・ベースド・リハビリテーション(CBR)に携わっている旧知を訪ねてみました.そして彼と一緒に古都バクタプールの街中を歩き,被害および支援状況を確認しました.そのときの彼のひと言が心に残っています.「街では,死者も出て家屋も多く破壊された.確かにこの震災は不幸な出来事には違いないけれども,同時に復興につながる光も感じた.それは,灯りのない夜にお金のある人もない人も,そして,カーストの高い人も低い人も同じ釜から食事をとり,同じ場所で眠ったことである」.
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