マイオピニオン
流れ者として
渡辺 玲
1
Rei WATANABE
1
1大阪大学大学院医学系研究科アレルギー免疫疾患統合医療学
pp.560-561
発行日 2021年7月1日
Published Date 2021/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206422
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私は今まで都府県の異なる3か所の大学病院で皮膚科診療を経験してきました.1か所でじっくり研鑽を積むことはとても大切なことですが,最近,この流れ者生活も私にとって意外とよかったかもしれない,と感じはじめています.
どこでも行われる診療は本質的には同じですが,細かな点でローカルルールがたくさんあります.皮膚生検一つとっても,マーキングの仕方,消毒薬の種類,縫合糸の種類,圧迫止血の程度,術後の処置方法,抗生剤内服の有無・期間,組織診断の際の染色方法,など,ゴールは同じでもその過程は多様です.患者さんあるいは若い先生方から質問をもらい,「あれ? どうして今までこのやり方が正しいと思っていたんだろう?」と疑問を抱いて初めて,私がしばしば習慣に疑問を抱かずに鵜呑みにしてきたことに気づきました.選択肢や比較対象がないと,これこそ唯一正しい,と信じ込みやすく,複数の施設を経験することで,そういう思い込みを少しずつ是正できるような気がします.
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