鴨川便り・12(最終回)
医療の流れ
牧野 永城
1
1亀田総合病院診療統括
pp.1600-1601
発行日 1994年12月20日
Published Date 1994/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901739
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初めは大変だと思ったが,あっという間に最終号になった.今となって,まだまだ書き足りぬ思いもするが,他方ではほっと安堵の気にも包まれる.最終号は,医療の流れについて,最近よく考えることについて気の向くままに書くことを許していただこう.
先週,横浜で世界病院連盟と日本病院会共催の国際学会があり,筆者はプログラム委員長だった関係で,ここ4年間,その準備に忙殺された.特別講演に招いたイギリス王室財団のマクスウェル氏は,今後医療は配給の時代に入ることが避けられぬとし,そのために患者の治療の必要度に関する優先順位を考えねばならぬ時代が来るとした.近年ヨーロッパの病院関係の学会ではよく話題にのぼるテーマである.言うまでもなく,技術の進歩と人口の増加および高齢化による医療費の高騰に医療資源が追いつかぬ時が来るという考えに基づく.ヨーロッパ諸国は一般に医療の上でも社会保障思想が優先して組み込まれている所が多いのだが,その多くが今は保障の限界に突き当たり,その解決を,市場経済の競争の導入に頼ろうとしている.他方,アメリカは頑なに守ってきた「病気は個人の責任」とした徹底的な自由個人主義から,漸次老人医療に税金を使うようになり,そして今度の国民皆保険という社会保障への大きな転換を計るクリントン,ヒラリー案への発展,そしてその議会での敗退など,世界の医療事情の変遷はめまぐるしい.
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