Derm.2021
何気ない言葉の持つちから
田中 了
1
1川崎医科大学皮膚科
pp.147
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206361
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20年以上前のことである.アレルギーと膠原病に興味を持ち皮膚科に入局した後,市中病院で初期ローテート研修を行っていた.麻酔科の3か月研修中,開腹術後の創部感染からの腹壁壊死,敗血症を伴った20歳台女性の患者さんがICUに入室された.救命には創部開放と腹壁のデブリードマンが必要であることは明白だったが,麻酔科医と外科主治医はそれを行ったあとのことを考え躊躇していた.そこにたまたま通りかかったのが形成外科部長(皮膚科専門医かつ形成外科専門医)である.「(部長)何悩んでんねや?」「(主治医)開けるのはできるけど開けたあとどうするん?で悩んでる.結局開けた後,どうにもならへんねやったら」「でもせんと助けれんねやろ?」「そうやねんけどなあ」「腹は落ち着いたらわしが後で何とでも塞いだる.せなあかんねやったら早よやれや」「…,そうか,なんとかしてくれるか.先生がそう言うてくれるんやったらやるか.」小生に対しての言葉ではなかったにもかかわらず,勝手に小生が皮膚外科医を志した瞬間である.とはいえ部長は言ったこと自体記憶にないであろう.
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