Japanese
English
症例報告
砒素混入ミルク中毒被害者に生じた多発Bowen病の1例
A case of multiple Bowen's disease due to arsenic contaminated milk
長谷川 道子
1
,
齋藤 龍一
2
,
田村 敦志
1
Michiko HASEGAWA
1
,
Ryuichi SAITO
2
,
Atsushi TAMURA
1
1伊勢崎市民病院皮膚科
2産業医科大学皮膚科学教室
1Division of Dermatology, Isesaki Municipal Hospital, Isesaki, Japan
2Department of Dermatology, University of Occupational and Environmental Health, Kitakyushu, Japan
キーワード:
多発Bowen病
,
砒素中毒
,
砒素混入ミルク
Keyword:
多発Bowen病
,
砒素中毒
,
砒素混入ミルク
pp.617-622
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206745
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要約 64歳,男性.初診の4年前頃,左大腿部に,8か月前頃,右胸部にいずれも自覚症状のない皮疹があるのに気づいた.生検にて両者ともBowen病と診断し,切除した.非露出部の多発例であったため,砒素の関与を疑い詳しく問診を行ったところ乳児期に砒素混入ミルクによる亜急性砒素中毒の既往があった.その後の経過観察中に左大腿の別の部位にもBowen病を発症して切除した.砒素による皮膚癌の発生は井戸水摂取などによる慢性砒素中毒においてよく知られているが,亜急性砒素中毒においても起こりうる可能性がある.現在までのところ砒素ミルク事件被害者の皮膚癌報告は,他の集団砒素中毒事件における皮膚癌の発生率と比較すると低値である.しかし,砒素による発癌のリスクがきわめて長期間続くことを考えると,今後被害者における皮膚癌発生が増加する可能性もあり注意を要すると考えた.
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