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雑誌や論文をどう整理するかの思案は,臨床家や研究者にとって持病のようなものである.大袈裟に言えば若いときからこの歳までこの持病と戦ってきた.皮膚科医になって10数年くらいは個人購読していた4〜5誌を製本していた.製本は皮膚科学に対する我が志を表し,皮膚科医としての未来に対する気合であった.しかしその製本した蔵書が嵩むようになり,引越しを繰り返す度に収納場所に困り,また気合いが製本代を払う負担を下回るようになり,結局,止めた.そして現在は蔵書というものを持たなくなった.もちろん大学の居室には幾ばくかの本は置いてあるが,頻繁に開く本はなく,背表紙をチラ見し,処分することになるだろうな,と諦念がよぎるだけである.
論文の整理はもっと厄介であった.と,過去形で書くのはもう整理を実質的に行っていないからである.若い頃はパソコンもPDFもなかったため,せっせとコピーして課題別ファイルを作ってバインドしていた.この大量のバインダーは今も3か所に分けて放って置かれている.その角がボロボロになったバインダーを見ると若き自分がいじらしい.昨今,日進月歩の知見は結局その都度調べるほかはなく,10年以上経ったバインダーを紐解くことはない.現在どう整理しているかと言えば,パソコン内にフォルダを作ってそこにPDFやらデータやら資料を溜め込んでいる.過去の論文を調べ収集する目的のほとんどは,自著の論文書きのためであるから,そこに書きかけの論文も入れておくことになる.こうしたフォルダの数がどんどん増えてくると,フォルダの整理という新たな問題が発生する.結局整理がつかないため,キーワードで入力検索ができるようなフォルダ名を捻り出す.時間が経過しても自分の性格ならこういうフォルダ名にしているはずだ,という自分に対するヨミを入れてタイトルを付ける.何か自己の性格を自問自答するようで,性格の浅薄さが浮き彫りにされる.
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