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文献紹介 ウェアラブル機器,医療分野における活用を目指して
持丸 奈央子
1
1慶應義塾大学
pp.450
発行日 2017年5月1日
Published Date 2017/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205124
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ウェアラブル機器とは体に装着可能なアイテムに組み込まれた電子機器で,内部に小型デバイスが搭載されており,データ収集や行動追跡をリアルタイムで記録できるツールである.医療機関内で収集される情報は,患者の生活中の限られた断片的なものであり,ウェアラブル機器を用いることで個人の活動を継続的かつ詳細に計測し,日常生活のなかの多種多様な情報を効率よく収集することができる.しかし,これまでのウェアラブル機器は個人の身体活動および心拍数などバイタルサインを追跡することしかできず,ユーザーの健康状態を分子レベルで解析することはできなかった.
本研究で著者らは,汗の分析に注目した.汗に含まれるNaやK,乳酸塩,グルコースなどを分子レベルで解析することにより,個体の生理状態を詳細に記録できると考えた.汗の分泌に関する多変量パラメータを統合し,汗から得られる複雑な情報を抽出するために,著者らは多重感知システムfully integrated wearable sensor arrays(FISA)を開発した.FISAはウェアラブルイオンセンサーにより電気信号を生成,それを増幅・フェルタリングし,処理,無線伝送を独立した回路で行う.多項目の情報を測定する間も個々の動作を維持できるため,大規模かつリアルタイムに生理学的・臨床的研究を進めることができるツールである.この機器を使用することで,汗分泌物の解析や皮膚体温の測定により,運動による生理学的動態変化を精密に記録できることがわかった.
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