- 有料閲覧
- 文献概要
アトピー性皮膚炎はかつてマスコミでもよく取り上げられ社会問題となるほどであったが,最近は見かけることが少なくなった.ガイドラインができて現場の混乱は減ったように思うが,患者が減ったかというとそうでもない.学童を調査する限りはこの10年は10%前後で推移しておりあまり変化がないようだが,プロトピック®やネオーラル®が使われるようになり重症のアトピー性皮膚炎患者は減った印象ではある.近頃は生物製剤全盛期を迎え,乾癬や癌の治療に画期的成果をもたらしている.そして近々アトピー性皮膚炎にも導入されていく予定である.これまで既存治療でどうにも治せなかった患者に対しては福音となると思われるが,アトピー全体の患者数を減らすには至らないだろう.というのも生物製剤が適応となる患者は難治なごく一部となると思われるからである.そして病院・診療所でアトピーを仮に完治させていったとしても患者数は容易には減らないだろう.それは常に多くの新しいアトピー患者が生み出されているからである.研究者・臨床家として病気と向かい合うと,病気の原因を分子生物学的手法で明らかにしていくことや目の前の患者さんをどう治療していくことに視点が行ってしまう.しかしそのアプローチだけではアトピーの患者が減らないのはこれまでの経過をみると明らかであろう.そこで全体のアトピー患者を減らしていくには新規のアトピー患者を減らすところに注力していく必要があると考える.つまりスキンケアを中心とした予防医学である.近年経皮感作の実態が明らかになり早期のスキンケア介入の重要性が示されている.現在,産官学を巻き込んだ特定の地域で徹底したアトピーの予防を行う社会実験を準備している.成果が出るのは十数年後だろうがいずれ報告できればと考えている.
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.