病院職員のための医学知識・11
脳卒中の今と昔
美原 博
1,2
1脳血管研究所
2美原記念病院
pp.96-97
発行日 1973年11月1日
Published Date 1973/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205166
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脳卒中という言葉の意味は?
いろいろの病気の名前は,今と昔ではまったくちがい,近代医学の発達につれ,どんどん新しくあらためられ,昔の病名は,ほとんど残っていません.ところが面白いことに,卒中という言葉だけは,紀元前から記載されており,いまだに用いられています.‘卒’とは‘にわかに’とか‘急激に’という意味で,‘中’とはあたるという意味です.字典にも「血,脳に迫りて,にわかに卒倒し,人事不省に陥り半身不随となる」とありますが,今でも東北地方では,脳卒中になると‘あたった’といっています.俗に,手足がきかなくなってブラブラしている人を‘中気’‘中風’と呼びますが,昔の人は,高血圧や動脈硬化が原因だとは知らないから,悪気あるいは,悪い風に中(あた)ったから半身不随になるのだと考えていました.東洋だけでなく西洋でも,ギリシャの昔から,apoplexiaという言葉があり,アポプレキシヤは,ちょうど卒中と同じ意味です.
いまでも医師の間では,ひとくちに‘アポ’といわれています.‘誰々がアポで倒れた’‘アポった’などと使います.
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