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「脳と神経」25巻(昭和48年,1973)の最終号には,脳神経外科論文集が特集としてまとめられ,一緒に第1巻から25巻までの総目次が付録として掲げられている。それは,同年7月に「脳神経外科」誌が誕生したのに伴って,本誌の性格を変針することになり,その際,発刊以来の4半世紀の歩みをふり返ることが企てられたためである。私は,当時,編集会議でその相談にあずかった者だが,今回,あらためて総目次を読み直してみると,「脳と神経」の歩みは,戦後わが国の脳神経研究,関連臨床各科の発展の様子を鏡に映しているようで,まことに興味が深い。その中には,お世話になった諸先生や親しい友人諸君—すでに亡くなったお名前も少くない—の記憶に残る論文を各巻にたどることができて,懐旧の情を抑え難い。そこで古い巻を書棚から取り出して,しばし読みふけったものである。
本誌の発刊当時,脳神経関係の雑誌は,臨床では精神神経学雑誌のような古い学会誌は別として,本誌だけしかなかった。もっとも名前だけからいうと,「脳」という雑誌が戦前にあったが,これは全く精神科医だけの小さなサークルの機関誌で,戦争前に廃刊になっていた。「脳と神経」には,脳神経外科研究会の機関誌的な性格が初めからあったそうであるが,私のような部外にいた精神科医はそのいきさつを知らなかった。むしろ単純に脳神経研究の大きな将来に期待をもつという関心から,この雑誌を迎えたような気がする。そこには気易く集まれる雰囲気があった。私は,精神科医としての修業のかたわら,神経化学や行動学のような領域を彷徨したものだから,どこにもって行ったら話を聞いて貰えるだろうかというような行動の論文も,本誌にはのせていただくことができて,有難かったことを覚えている。
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