Derm.2017
凍結療法
神谷 浩二
1
1自治医科大学皮膚科学講座
pp.107
発行日 2017年4月10日
Published Date 2017/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205080
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凍結療法は,皮膚科診療において大変有用な治療法の1つである.誰もが日常診療における第一歩として習得するが,調べてみると案外奥が深い.
文献報告によれば,凍結が治療に初めて利用されたのは19世紀中頃のようである.現在では,冷却材として液体窒素(−196℃)が最も広く使用されているが,以前はドライアイスも使用されていた.凍結方法に関しては,綿球やピンセットを用いる方法から,専用の装置を用いる方法までさまざまである.皮膚科診療においてはウイルス性疣贅に対して綿球法を用いる場面が多い.そのほかにも,脈管腫,上皮性良性腫瘍,一部の皮膚悪性腫瘍に対する治療に用いられることがある.皮膚疾患だけでなく,心房細動の手術や網膜剝離の凝固術に用いられることもあり,腎癌,肝癌,前立腺癌に対して穿刺して凍結する手術も行われているようだ.凍結療法は,病変を凍結,融解,壊死させることによって治療している.時に,液体窒素で焼く,と表現されることがあるのは,病変部がまるで焼かれて壊死したような状態になっているのを表しているのかもしれない.どれだけの強さ,どれだけの時間,どれだけの回数で治療を行うのかは,目安はあっても決まりごとはない.凍結させる病変の組織や構造,病変の部位によって反応が異なるため,症例ごとに治療方法が少しずつ異なる.そのため,指導する立場になってみると,この感覚を伝えるのは思いのほか難しい.
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