Derm.2017
人工知能は幽霊を見るか?
渡辺 玲
1
1筑波大学医学医療系皮膚科
pp.95
発行日 2017年4月10日
Published Date 2017/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205076
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(お,あのときの非定型抗酸菌感染症と似ているな)「あぁ,熱帯魚飼っていらっしゃるんですね?」,(貨幣状湿疹と間違えて4か月もボチシート貼ってたっけ)「皮膚の細胞同士の接着剤を壊してしまう物質がないか調べましょうね」,(腱鞘炎だと思ってついで診療で湿布を処方し続けて猛省したことがあったなぁ)「好酸球性筋膜炎という病気が考えられますので画像検査と筋膜の検査をしましょう」,こんなふうに,私たちの臨床は以前の経験での学習や反省の上に成り立っている.ただ,実際の経験がこのように次の診療に活かせているとも限らない.むしろ,「この何かおかしいという感覚,前にも感じたような気がするけれど…いつだっけ? 何の患者さんだっけ?」という,手からすり抜ける形ない相手を必死で掴み直そうとするようなもどかしい感覚につきまとわれ苦悩することのほうが私は多い.皆さんはいかがだろうか?
かつての経験を幽霊に再会したような感覚として思い出すのでなく,実体ある経験として次に活かすためには,自分が捉えた問題点を記憶に理論的に刻み込むことが大切だろう.月並みだが,一瞬心に浮かんだ疑問を文章化して輪郭をはっきりさせ,なぜ疑問に思ったかを考え,その都度調べる.忘れっぽい私にはそうするよりほかないと思って,外来の合間に走り書きした疑問メモが未解決のまま1,000以上,すでにメモの判読すら困難なものも.
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