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天疱瘡や類天疱瘡の患者さんにステロイドの内服を開始するとき,表題のように質問されたことはありませんか? 多くの場合,「一生という訳ではないが,これから少なくとも数年間はつきあうことになるでしょう」と私は答えています.天疱瘡診療ガイドラインは,治療目標を「プレドニゾロン(PSL)換算で0.2mg/kg/日または10mg/日以下のステロイドの内服で皮疹がみられない状態を維持すること(寛解)」に設定しています.しかし,この目標が達成された後のことは触れられていません.もちろん,症状が落ち着いている症例では,PSL 5mg/日に向けて減量を進めるべきなのは間違いありません.では,PSLが5mg/日になった後は? その答えは,非常に難しいと思います.「先生,ステロイドは減らせるのですか?」水疱症の専門外来で,PSLが5mg/日まで減った患者さんからよく聞かれる質問です.副腎皮質ホルモンとして,健常者ではコルチゾール換算で20mg/日が分泌されるといわれています.PSLに換算すると5mg/日程度になるので,5mg/日まで減量できた症例は,健常人の分泌量と同等量のステロイドを内服していることになるので,内服が本当に必要か? という疑問は当然です.しかし,内服しないでよいとも言い切れません(中止したら天疱瘡が再燃した,という痛い経験をお持ちの先生も少なくないのではないでしょうか).そういう葛藤を,正直に患者さんに説明すると,「ステロイドを減らしたいので,リスクを承知でチャレンジします!」という方と,「再発する可能性もあるのですか….あんな辛い思いは二度としたくない」とPSL 5mg/日の継続に納得される方と,半々といった印象です.とはいえ,表題の質問をされた,これから初期治療が開始される患者さんにとっては,まだまだ遠い未来の話になりますね.
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