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皮膚科は,診断から検査,治療まですべてを行える数少ない科である.しかもその守備範囲は広く,皮膚,皮下に病変があればすべてが皮膚科関連の疾患であると言っても過言ではない.一方,手術においても,皮膚腫瘍や皮膚潰瘍に対する治療はもちろん皮膚欠損に対する再建治療,重症虚血肢,骨髄炎,リンパ節,静脈瘤に至るまで多様な範囲をカバーすることが可能である.部位に至っては全身が対象であり,顔面,体幹,四肢,陰部など多彩な解剖を熟知する必要がある.よく若手医師に,「どうやったら解剖を覚えられますか?」と聞かれるが,いまだになかなかいい答えが思いつかない.自分もまだまだ修練中の身ではあるが,結局のところ教科書を用いて網羅的な勉強を行った後に,1つ1つの症例に取り組むにあたってそれを確認するといった,地道な努力しかないのではないかと考えている.そのためにも1回1回の手術記録に解剖学的な特徴やその際に学んだことを追記し,ファイリングして反芻することが最も重要であると考え,今でもずっと続けている.そうやってたまった手術記録の束を見ると,気持ち的にもあたかもできるようになった感じを受ける.昔,手術中に,指導医の先生から細かい口頭試問を受けたことを今でも覚えている.また,手術記録を提出した際には細かく直され,解剖について勉強するように指導され,そのときにはよく理解していなかったが,同じことを若手に行っている現在の自分があり,やっとあのときの指導医の先生の気持ちが理解できるようになってきたのかなと,ほんの少し自分の成長が見えて嬉しく思う今日この頃である.どの分野においてもそうだと思うが,1つの分野を突き詰めていくことは楽しく,充実したものであると心から思う.
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