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大学に籍を置いていると常にいろいろな方面から,臨床や研究に邁進することを求められます.その結果として論文業績を期待されますし,立場が上になると期待する側になる機会も増えてきます.論文を書く理由は人によってさまざまでしょう.上級医に書けと言われたから? 専門医試験の受験資格を得るため? 昇進の条件だから? 教授就任の野望に近づくため?… 私の場合は,1つ挙げるとすれば「自分がこの時代に皮膚科医として生きた証拠を残したいから」になるでしょうか.研修医のときに初めて英語で症例報告を書き上げて,acceptされたときはもちろん嬉しかったのですが,その数か月後に自分の名前の存在をPubMedで確認したときが,最も達成感を感じた瞬間でした.この時代に皮膚科医Fujita Yが存在したということが,死後100年が経過しても記録として残り,誰かによって検索されるのだろうと想像すると,胸が熱くなってきます.
となると私の究極の野望はFujita disease(syndromeでもsignでも可)を発見することですが,残念ながら私にそこまでの臨床能力は身についていません.そこで次点の野望として,最近「自分自身に生じた皮膚病変を英語で症例報告する(させる)」ことを目指しています.論文を検索していると,時折One of the authors(Y.F.) presented with…といった文章で始まる症例報告に遭遇します.実際,そういう視点で自分自身の皮膚をじっと見てみると,少し珍しい皮疹が案外あることに気づきます.いつか自分の皮膚が誌面を飾ることを夢見ながら,メタボ気味になりつつある自分の身体を日々脱衣所で眺めるのでした.
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