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Systemic lupus erythematosus(SLE)は非常に多彩な臨床症状を呈す自己免疫疾患であり,個々の症例の治療への反応性および予後予測は困難である.SLEの分子レベルの不均一性を検討するために,小児SLE患者158人を最長4年間にわたり経時的にフォローし,症状や治療内容などの臨床情報,血液転写因子情報を収集し,解析を行った.
SLE群全体と健常人コントロール群サンプルにおいて転写因子を階層クラスター解析したところ,SLE群ではIFN関連転写因子群の発現が上昇していた.また,SLE患者群を病勢,人種,治療内容,ループス腎炎発症の有無,腎炎サブクラスごとの治療に対する反応性別に分け,それぞれに発現の異なる転写因子群を解析し,その機能を同定した.その結果,病勢にはplasmablastに関連する転写因子群が,活動性腎炎発症には活性化好中球に関連する転写因子群が,それぞれ最も相関しており,膜性ループス腎炎と増殖性ループス腎炎ではMMFを用いた治療においても転写因子群発現パターンの違いが認められた.次に,SLE患者80人について個々の患者ごとに経過を通じてSLE Disease Activity Index(SLEDAI)に最も相関する転写因子群を同定し,患者層別化を行ったところ,7つの患者サブグループに分けられた.サブグループ間で患者の遺伝子型を解析したところ,各グループを特徴付けるのに重要な転写因子群と,一塩基多型の間に関連がみられた.また,サブグループごとに発現の異なる転写因子を5つの機能別転写因子群に落とし込み,患者階層化を行うことで,より安価で簡便な患者層別化が実現できる可能性が示された.
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