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文献紹介 誘導ラマン散乱顕微鏡を用いた爪甲内分子拡散の解析
鈴木 さつき
1
1慶應義塾大学
pp.502
発行日 2016年6月1日
Published Date 2016/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412204812
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爪甲疾患に対する効果的な治療法には解決すべき課題が残されており,1つには爪甲内部まで薬剤を到達させることが難しいことが挙げられる.著者らは,誘導ラマン散乱顕微鏡を用いて,爪甲に外用した化学物質が爪甲の中を拡散していく様子をリアルタイムに可視化して解析することに成功した.重水,プロピレングリコール,DMSOそれぞれを爪甲表面に塗布し,爪甲に浸透していく様子をラマンシグナルを利用して可視化し,得られた情報をもとに深達速度と深達度として解析がなされた.その結果,重水の拡散はプロピレングリコールやDMSOよりも速やかに生じることがわかった.また,ラマンシグナルを標準化することで,光の散乱と吸収の影響を最小限にし,拡散性の半定量分析も行った.面白いことに,溶媒の拡散は,爪甲に浸透した溶媒の濃度に依存して挙動が変化する可能性が強く示唆された.誘導ラマン散乱顕微鏡を用いた爪甲への溶媒の解析の報告は過去になく,その可視化と半定量に成功したのは今回の報告が初めてである.使用した3溶媒の動力学的検討により,それぞれが爪甲への浸透濃度依存性に拡散能が変化することが明らかとなった.以上の結果は,難治性爪甲疾患の治療薬の構造を決めたり最適化を行う際に有用となることが期待される.
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