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1. 高齢化社会,地域医療として皮膚科医に求められるもの
高齢者社会といわれるようになって久しい.高齢者社会では住民が住み慣れた場所で安心して生活できるように地域包括医療の理念の下で,保険(予防),医療,介護,福祉の面からノーマライゼーションが提唱されており,皮膚科医もおおいに寄与できる.高齢者は内科,外科,整形外科,眼科,耳鼻科,歯科そして皮膚科など身体のいたるところの修正を余儀なくされ,専門の科への受診が必要になる.しかし,老体はいたるところで不具合が生じ,病院・診療所への受診も困難になることが多くなる.高齢者に対する皮膚科診療について言えば,介護にも通ずるが,往診に対する期待の高いことが挙げられる.われわれの医療法人グループは札幌を中心に展開しており,往診の依頼は年々増加し,その要望を比較的容易に受けることができる.しかし,往診は16kmを超える地域に対しては往診料が算定できないこともあり,それぞれの地域で皮膚科医がその地域をカバーしなければならない.
また比較的若い世代でも,北海道のように冬は雪に閉ざされ,地域的にどこに住んでいても同レベルの治療が受けられるとは限らない現実もある.田舎に住んでいても「しみ」はとりたいかもしれないし,地方では専門性の高い治療が受けられない諦めもあるかもしれない.こういった状況下ではわれわれ皮膚科医には何が求められ,何をしなければならないであろうか.蕁麻疹,湿疹,白癬などの皮膚病は治療薬があればどこでも治療は可能であるが,乾癬,白斑,母斑(あざ)などはスペシャリストが必要であるし,専用の医療機器も必要となる.これらの人と機器の問題を解決しなければ地域医療として応えられないことになり,それぞれの地域ではこれらを整備し,医療レベルの高い診療を提供する努力をしなければならない.
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