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図82 T cellのsubsetの割合がT cellの浸潤を主病変とする腫瘍の悪性度の尺度になることを図81で述べたが,核の切れ入みの程度も悪性度の指標として使用されている.むしろこの方が文献的にも古く1,2),多数の研究者の一致した支持を得ている,数量的な標示をする場合,悪性度を主眼にするか良性度を示したいのかを,まず決める必要がある.核の切れ込みの場合には悪性になるほど,その程度が増すので,標示数が大きいほど悪性というふうになると便利である.また標示数が小数点以下では扱いにくい.勿論,核膜の長さ対核の容積を求めるわけである.これらの点を考慮に入れながら,もし核が満月のように真ん丸であった場合を考えよう.核膜の長さ(円周)は核の半径をγとすると2πγであり,核の容積(円の面積)はπγ2である.核膜の長さの核質に対する割合が核の切れ込みの指標となるので,核膜の長さを分子にすると2πγ/πγ2=2/γとなり,その値は半径に左右されることになる.かつ半径2以上の場合には,その指標数は小数点以下の値となる.γを消去し,指標数を1以上の値にするには,分母のルートをとればよいことは明瞭であろう.このようにして考案され,現在一般に使用されているのがnuclear contour index (NCI)である.即ち,NCI=核膜の全長/√核の面積である.勿論,計測は電顕写真の上で行なわれなければならない.この計算式で,切れ込みの全然ない正円形の核のNCIを試算すると,2πγ/√γ2π=2√πとなり,その値は約3.54である(図82A),少しでも核に切れ込みがあればこの値は増加するので(図82B〜I),NCIが小数点以下になることはない.本図では種々のNCIを持ったT cellの例を示した.NCI3.67の細胞の核(図82A)はほぼ正円に近く,NCI13,9のそれ(図821)は白血球の分葉核のように中途で分離している.これは切れ込みが深く,かつ入りくんでいるために超薄切片中で不連続となったのである.本図で示した凡ての細胞は,その細胞膜をLeu 1, Leu 3aまたはOKT 8で標識してある.即ちこれらの細胞は確実にT cellである,細胞膜に存在するそれぞれの抗原はこれらの単クローン抗体と反応し,更にperoxidase—antimouse IgGがその反応部に吸着し,最後にdiaminobenzidine (DAB)を加えてその酸化物を作る手順は図81で解説した.図81では最終反応物質は褐色の酸化されたDABであったが,この酸化物は電子線を通さず(電子密),従ってフィルムの上では陰影となって結像する.即ち電顕でも同時に使用できるのである(図83参照).
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