- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
図78,79菌状息肉症(mycosis fungoides)なる名称は,本症の末期,即ち腫瘍期に茸状(fun—goid)隆起を示す腫瘍が形成されるところから由来している.この時期には臨床的にも,組織学的にも診断は容易である.本症で診断が最も困難な時期は,その初期であろう.2〜3カ所に紅斑と軽い鱗屑を伴う発疹が持続的にみられ,他の疾患,例えば慢性湿疹脂漏性湿疹などと紛らわしい(図78A,B).組織学的にも,軽度のリンパ球浸潤がある以外に特徴的な所見がなく(図79A,B),慢性皮膚炎として片付けられる場合が多い.しかし,よくみると表皮内に浸潤したリンパ球は,小さなポケット状にかたまる傾向を示す(図79B).この時期の病変は他の名称,例えばsmall plaqueparapsoriasis, digitate dermatosisなどと呼ばれている.後者はこの時期の発疹が,時に手指で押した跡のような形態をとることがあるのを指す(図78C,D).この時期が過ぎると,或は最初から,かなり大きな斑状の発疹に軽度の鱗屑を伴った局面が現われる.即ち,parapsoriasis en plaque,或はlarge plaque parapsoriasisと呼ばれている型である.この発疹はしばしば表皮の萎縮を伴い,色素沈着をみる(図78E,F).色素沈着は大抵の場合poikiloderma様であり,parapsoriasisvariegataと呼ばれる(図78F).この時期には軽度の浸潤を触れることができる.組織学的には真皮上層にリンパ球,組織球の帯状の浸潤があり,表皮基底層にも時にこれらの細胞集塊が見出される(図79C,D),Poikiloderma様,或はpara—psoriasis variegataといわれる型の組織像は,poikiloderma atrophicans vascularcのそれと区別しかねるが,リンパ球,組織球の浸潤がより高度である(図79E,F).表皮基底層は完全に破壊されている場合があり(図79E),従って,そこに含まれていたメラニンの真皮上層への落下,即ち色素失調が起こり,これによってpoikiloderma様の臨床像が説明できる.更に破壊された基底層からは表皮角化細胞の再生が起こりにくいため,表皮の萎縮を招き,臨床的に紙の様に薄く,かつチリメン皺の様な外観を呈するのである.
局面期(Plaque stage)はIarge plaque parapso-riasisから移行するものが多いが,少数は前述のatrophic, poikilodermatous, variegate typesにも続発する.ここで注意しなければならないのは,plaqueなる用語が2つの意味を持っていることである.フランス学派の用法では,plaqucは平らな発疹でmaculeと同義である.例えばDegosの教科書1)でparapsoriasis en plaqueの個所をみると……Plane ou tres legerement saillante, noninfiltree (平坦,或は極く軽度に隆起し浸潤がない)となっている.米国ではplaqueというと,隆起して境界明瞭な浸潤を意味する.英国の文献でも同様の用法がみられる.従って,plaque stage は明瞭に認識できる隆起した局面で,いろいろな色を呈する時期である(図78G,H).組織学的には,真皮上層から中層にかけて強いリンパ球の浸潤があり(図79G,H),時にはリンパ球の集塊が他より離れて,かなり深い所にも点在する(図79G).
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.