連載 皮膚病理の電顕・31
付属器腫瘍(XX)—脂腺癌(3)
橋本 健
1
Ken Hashimoto
1
1Department of Dermatology, Wayne State University School of Medicine
pp.86-88
発行日 1984年1月1日
Published Date 1984/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202979
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図76原発巣.正常に分化した脂腺細胞や正常に角化した導管の細胞は,癌化した組織にはないのであろうか?これらの細胞は量的には少ないが存在する.特に完全に分化した脂腺細胞を示すことができれば,診断は確定するので一層の努力を払う価値がある.木図で示した細胞は,ほぼ完全に脂質化した脂腺細胞といえる.先ず細胞の中心にある核(N)が濃縮して(pyknosis),電子密度が増加している.大きな核小体(n)の存在は,この細胞が悪性変化したものであることを示唆する.細胞質は図74で既に観察した脂質の小滴(l)が融合した大きな脂胞(L)でほぼ完全に占められ,蜂窩状にみえる.その隔壁にトノフィラメント(t)が残存しているが,その発達は正常脂腺細胞にみられる如く非常に不十分である.この細胞が貪食細胞でない証拠として,数個のデスモゾーム(矢尻)が細胞周辺に散見される.挿入図では小脂滴(*)を含む脂腺細胞に混じって,ほぼ完全に角化した細胞(K)がみられる.脂腺導管部の細胞は表皮細胞の如く完全に角化することは稀で,その中にトノフィラメントが認識され,且つ脂滴を含む.即ち一個一個の細胞はこの細胞に一致する.
×12,000挿入図×5,000
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