連載 皮膚病理の電顕・19
付属器腫瘍(Ⅷ)—エクリン汗腺分泌部の癌(2)
橋本 健
1
Ken Hashimoto
1
1Department of Dermatology, Wayne State University School of Medicine
pp.86-89
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202780
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図51エクリン分泌部の一つの特徴である細胞間小運河(intercellular canaliculus)(IC)9)が腫瘍組織にもみられる.正常組織では小運河は主腺腔より分岐した支流に相当し,腺腔の分泌面積を拡大するのに役立っている.本図では主腔が見当らず,左上には膠原(C)を含む間質がみられる.小運河の胎生発生は明らかではないが,このように独立した小腺腔が発生して,やがて主腺腔に連続するのかもしれない(図52B参照).この小運河は4-5個の腺細胞によって取囲まれているが,それらが腺腔の近くで接合する部分にはデスモゾーム(d)と密着接合(tight junction)(t)が連続して存在し,正常エクリン汗腺分泌部上皮の腺腔近傍での接着構造に類似する9).勿論,他の分泌腺でも腺腔側で細胞膜の癒着が起こるから,このデスモゾームと密着接合の組合せだけでエクリン腺由来と決めることは不可能であろう.本図でも弾力線維の一部(e)が腫瘍細胞に取囲まれており,この部分の腫瘍が真皮を破壊して増殖し,膠原(c)は破壊するが,弾力線維は完全に分解し得ないことを示唆している.
g:糖原頼粒,m:糸粒体,N:核x22,800
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