連載 皮膚病理の電顕・30
付属器腫瘍(XIX)—脂腺癌(2)
橋本 健
1
Ken Hashimoto
1
1Department of Dermatology, Wayne State University School of Medicine
pp.1124-1127
発行日 1983年12月1日
Published Date 1983/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202962
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図73リンパ節転移巣.前図では脂腺細胞に類似した空胞を持った細胞が存在し得ることを述べたが,それではこの細胞はどうであろうか?先ず細胞質が,より電子密である.その密度の大部分は,細胞に含まれる大量のトノフィラメント(t)によることがわかる.その量の少ない*周囲の細胞は非常に明調である.次にこの細胞は,周囲の明調細胞とデスモゾーム(矢尻)により連結されている,更に細胞内に不規則な形をした多数の空胞(S),或いは脂質滴を含む.電子密な顆粒(K)はケラトヒアリン顆粒に類似する.正常な脂腺細胞は胎生発生的に表皮より毛芽を経て発生してくるので,従って少量ではあるがトノフィラメントを含み,細胞はデスモゾームにより連結されている1).脂腺導管部ではトノフィラメントの量が増加し,ケラトヒアリン顆粒が産生され,デスモゾームも良好な発達を示す.その反面,脂質の産生は低下する.これらの事実より,この細胞は脂腺導管部の細胞に似た分化を示すといえる.勿論,癌化した組織では病的な分化が起こり得るし,腺細胞がトノフィラメントを大量に分化することも考えられるので,1個や2個の細胞をもって本腫瘍を脂腺導管部癌と断定することはできない.
X:図74で拡大した部分×7,800
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