連載 皮膚病理の電顕・29
付属器腫瘍(XVIII)—脂腺癌(1)
橋本 健
1
Ken Hashimoto
1
1Department of Dermatology, Wayne State University School of Medicine
pp.1038-1041
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202947
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図71付属器腫瘍の最後として皮脂腺の腫瘍を観察しよう.汗腺腫瘍の項で述べた如く,皮脂腺の腫瘍にも増殖(hyperplasia),腺腫(adenoma),上皮腫(epithelioma),癌(carcinoma)の区別をつけると便利である.図71Aは顔面の皮脂腺であるが,各毛包に付属する大きな分葉した腺体がみられる.成人の皮膚では,この程度の脂腺の発達は正常であるが,図71Bに示した様な脂腺となると増殖の範疇に入る.即ち,真皮上層を完全に占める脂腺塊は,一個一個の細胞に異常はないが,全体として異常に増殖している.このような像は老人性脂腺増殖症(senile sebaceous glandhyperplasia)や,Fordyce病に見られる変化である.ここでも各個の細胞は正常に分化して明調な脂腺細胞となっている.しかし図71Cで示した腺腫となると,未分化な細胞が多数増殖して,その中の僅かな細胞だけが脂質を産生する明調な細胞に分化している.間質のリンパ球浸潤を除けば,腫瘍の実質は分葉した腺構造を示す.更に分化の程度が低く増殖の傾向の強い上皮腫(図71D)となると,脂質を含む明調細胞の分化は著しく減少し,腺体構造も失われ,ただ不規則に分岐する細胞索として発育する.基底細胞上皮腫の脂腺分化を遂げたものとの区別が困難である.以上は良性腫瘍であって,せいぜい上皮腫が局所的な侵入を示すに止まる.
A,B:×10C,D,F:×40E:×63
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