連載 皮膚病理の電顕・20
付属器腫瘍(Ⅸ)—エクリン汗腺分泌部の癌(3)
橋本 健
1
Ken Hashimoto
1
1Department of Dermatology, Wayne State University School of Medicine
pp.204-207
発行日 1983年2月1日
Published Date 1983/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202800
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図54汗管腫様エクリン汗腺癌を電顕で検索すると大体3種類の上皮を区別できる.即ち,角化上皮(A),導管上皮(B),および分泌上皮(C)である.これらは大体においてエクリン汗腺の表皮内終末導管部,直管部および分泌部上皮に相当する.腫瘍の大部分はAおよびBの像を示し,分泌上皮の形態を示す部分は僅かであり,且つその分化は不十分である.即ち,Cに示した大型で絨毛を生じた細胞はその明調度,糖原含有量において図50, 51で示した漿液細胞に劣る.
Aに示した部分では腺腔(L)に向って角化してゆく状態が明瞭である.即ち最内層には半分崩壊して多数の空胞を生じ,電子密度の落ちた細胞(*)があり,次に完全に無傷な角化細胞(H)が並び,その外側には多胞性のリゾゾーム(1)と考えられる空腔や張原線維束(矢印)を含む細胞が位置する.この構造はエクリン汗腺の終末導管部(acrosyringium)の構造にそっくりである2).V1はリゾゾームの大きくなったものか変性空胞で,V2はおそらく脂質顆粒であろう.
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