Japanese
English
原著
原発巣が自然消褪した悪性黒色腫の1例
Spontaneous Regression of Primary Malignant Melanoma
斎田 俊明
1
,
土屋 真一
2
Toshiaki SAIDA
1
,
Shinichi TSUCHIYA
2
1東京大学医学部附属病院分院皮膚科
2埼玉県立がんセンター病理部
1Department of Dermatology, University of Tokyo Branch Hospital
2Department of Pathology, Saitama Cancer Center
pp.363-368
発行日 1983年4月1日
Published Date 1983/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202827
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脳外科にて悪性黒色腫(MM)の脳転移が疑われて皮膚科を受診した42歳の男性例.全身の皮膚,粘膜,眼底などにMMの原発巣を思わす病巣は見出せなかった.しかし左背部に略硬貨大の完全脱色素斑が存在し,その中央には半米粒大の丘疹が認められた.患者の記憶によれば,約4年前ここに紫黒色の大豆大結節が生じたが,約半年の経過で自然に消槌して,後に脱色素斑が残ったという.組織学的に,丘疹部の真皮上層には母斑細胞様の胞巣が認められ,周囲に線維化と軽度のリンパ球浸潤を伴っていた.左腋窩にはリンパ節転移が確認された.これらより,この脱色素斑を自然消褪したMMの原発巣部と診断した.患者はその後,全身に転移が多発して死亡した.免疫学的には,末期での検索だが,患者末梢血リンパ球の同種MM細胞に対するcytotoxicityの増強はみられず,抗MM抗体も検出しえなかった.MMの自然消褪現象における免疫学的機序の重要性について考察を加えた.
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