〈原著論文抄録〉
Trichophyton verrucosumによる白癬の疫学と臨床—岩手県遠野地方における集団的発生とケルスス禿瘡の姉妹例について,他
高橋 伸也
1
,
牧野 好夫
1
,
福士 堯
2
1東北大学医学部皮膚科教室
2青森県立中央病院皮膚科
pp.505
発行日 1971年5月1日
Published Date 1971/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200808
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著者らは,これまでわが国において報告をみないTrichophyton verrucosumによる白癬41例,すなわち昭和36〜37年の岩手県遠野地方における集団的発生39例と,昭和45年5月の山形県におけるケルスス禿瘡の姉妹例を報告し,併わせて本症の疫学,臨床ならびに菌の分離に関する諸問題について考察を行なつた。
T. verrucosum白癬一般について要約すると,1)本症は牧畜,酪農が盛んな農村部において,主として冬期にみられる。2)牛白癬からの直接あるいは間接感染である。3)家族内発生をみることが多い。4)罹患は青壮年男子および小児に多くみられる。5)露出部位に好発し,とくに前腕,顔面,頸・項部,小児の頭部に頻発する。6)病変は膿疱形成を伴い,中心治癒傾向が弱い浮腫性,浸潤性紅斑局面で,一般に多発する。硬毛部においては急性深在性白癬を生じやすい。7)菌の分離,同定(大・小分生子形)には抗生物質,Thiamine HCl添加Brain HeartInfusion Agarが適している。8)菌の発育は室温よりも37℃の方が良い。
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